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連覇の喜びとCSの悔しさ、その気持ちのまま迎えたドラフト
10月22日、2026年のプロ野球ドラフト会議が行われました。阪神タイガースは明治大学の外野手・榊原七斗選手を1位で単独指名し、支配下7人、育成2人の計9人を指名しています。
ただ、正直なところ、まだ気持ちの整理がついていない方も多いのではないでしょうか。今季の阪神は球団史上初のセ・リーグ連覇を成し遂げました。それなのにクライマックスシリーズのファイナルステージではDeNAに4連敗し、日本シリーズへの道が閉ざされてしまいました。
私自身も、長く阪神を応援してきました。勝てない時代も、ようやく手が届いた歓喜の瞬間も、甲子園のスタンドやテレビの前で味わってきました。それでも、リーグ連覇という「史上初」を見届けた直後の4連敗は、こたえました。喜びが大きかった分だけ、落差も大きかったのです。
そんな中で迎えたドラフトでした。速報を見て「高校生がいない」「即戦力ばかり」と驚いた方もいるでしょう。将来のスター候補を夢見ていた方は、少し物足りなさを感じたかもしれません。
でも、私はこの指名リストを見て、少しほっとしました。CSの悔しさに、球団が真正面から向き合っていると感じたからです。
悔しさを「なかったこと」にしないチームは、必ず強くなります。
この記事では、今回のドラフトがCS4連敗のどんな課題に応えようとしているのかを、一緒に整理していきます。
問題の本質は「勝ち方」ではなく「層の厚さ」
CSで4つ負けると、どうしても「采配がどうだった」「あの場面でなぜ代えなかったのか」といった話になりがちです。私自身も、試合直後はテレビに向かってそんなことばかり言っていました。
けれども、少し時間をおいて振り返ると、見えてくるものがあります。報道でも指摘されているとおり、CSでは主力が欠けたときの選手層の薄さが露呈しました。シーズン143試合なら、誰かが抜けても他の選手がカバーし、時間をかけて立て直せます。ところが短期決戦では、その「立て直す時間」がありません。主力の代わりに入る選手の力が、そのまま勝敗に直結してしまうのです。
藤川球児監督もドラフト後、特定のポジションだけでなく、複数のポジションで「次の選手」を用意することが課題だという趣旨の話をしています。つまり、今のレギュラーが弱いのではありません。レギュラーの「次」がまだ育ちきっていないことが、本当の問題なのです。
強いチームとは、スタメンが強いチームではなく、控えが怖いチームです。
連覇という結果は、今の主力が本物であることの証明です。そのうえで、日本一まで勝ち切るには「もう一枚」が要る。今回のドラフトは、その「もう一枚」を探しにいった指名だと私は受け止めています。
層が薄くなった原因は3つあります
では、なぜ層の薄さが課題として残ったのでしょうか。報道で伝えられているチーム事情から、原因を3つに分けて考えてみます。
原因1:外野は近本・森下の2人に支えられている
現在の外野は、中堅の近本光司選手と右翼の森下翔太選手が定位置をがっちり守っています。一方で、左翼はここ数年レギュラーが定着していないと報じられています。
2人が元気なうちは心強いのですが、どちらかが欠ければ、すぐに大きな穴が空きます。とくに中堅は、広い甲子園でもっとも守備範囲が求められるポジションです。近本選手の「次」を誰が担うのかは、ファンとしても長く気になっていた点でした。
一人の名選手に頼るほど、その選手がいない日のチームは弱くなります。
原因2:内野と捕手で「次」が決まっていない
報道では、阪神は正遊撃手がまだ定まっていないとされています。遊撃は守備の要であり、ここが固まらないとチーム全体が落ち着きません。
捕手も同じです。正捕手の坂本誠志郎選手の経験とリードは大きな武器ですが、捕手は一人で全試合を担えるポジションではありません。短期決戦で捕手が代わるたびに不安を感じるようでは、投手陣も思い切って投げられません。
守りの要に「代わり」がいないことは、目に見えないところでチームを苦しめます。
原因3:投手陣の「タイプ」の幅が足りない
阪神の投手力は12球団でも上位だと私は思っています。それでも、短期決戦では同じ相手と続けて当たります。似たタイプの投手が続くと、打者に慣れられてしまいます。
今季は徳島インディゴソックス出身の工藤泰成投手が守護神として大ブレークしました。こうした新しい力が出てくると、ブルペン全体に厚みが生まれます。逆に言えば、そうした「新しいタイプ」をもっと増やす必要があるということです。左投手の層についても、藤川監督は今回の指名で補強できたことを評価しています。
同じタイプの好投手を10人そろえるより、違うタイプを5人そろえるほうが短期決戦では強いのです。
解決方法:今回のドラフトはこう応えた
ここからは、今回の指名選手が、いま挙げた3つの原因にどう応えているのかを見ていきます。
外野:1位・榊原七斗選手は「ポスト近本」
1位の榊原七斗選手は、兵庫県高砂市出身の外野手です。報徳学園時代は最速145キロの左腕エース兼外野手でしたが、明大では野手に専念しました。173センチ、79キロと小柄ながら、大学通算12本塁打、50メートル走5秒9、遠投110メートルという数字が並びます。2025年秋にはベストナインを獲得し、大学日本代表にも選ばれました。
藤川監督は「足が速く強肩。広い甲子園を本拠地にしていますから、かなりの強いアームで、1点を守り抜くのが甲子園における阪神の大事な野球になります」と語っています。さらに、憧れの存在だという近本選手については「入団するまでにはいいライバルとしてスタートできるくらいのものはもっていかなければ」とも話しました。
名字の「榊」に阪神の「神」が入っていて縁を感じた、という藤川監督らしいコメントも報じられています。地元・兵庫出身の選手が「ポスト近本」として甲子園の中堅を目指す。ファンとしては、それだけで胸が熱くなります。
内野と捕手:社会人の即戦力2人
4位の相羽寛太選手(ヤマハ)は、2025年の都市対抗で首位打者を獲得した内野手です。高校時代は遊撃手として甲子園に出場しています。3年連続で指名漏れを経験し、4年目でつかんだプロへの切符です。正遊撃手争いに、即戦力として加わることが期待されています。
6位の越川海翔選手(東京ガス)は、二塁送球1.8秒台の強肩が武器の捕手です。坂本選手に教えを請いたいと話しているそうで、捕手の層を厚くする役割が期待されます。
投手:「タイプの違う」投手が5人
2位の馬場拓海投手(日体大)は、体を大きくひねるフォームから最速150キロ台の直球を投げる右腕です。首都大学リーグで通算12勝3敗、防御率1.52という成績を残しています。3位の常深颯大投手(大経大)は、ボールの出どころが見えにくい左の変則投手です。入学時133キロだった直球を、最速140キロ台後半まで伸ばしてきた努力の人でもあります。
5位の的場吏玖投手(天理大)は186センチの長身右腕で、リーグ通算24勝2敗。7位の石井康輝投手は、工藤投手と同じ徳島インディゴソックスから指名された最速154キロの力投派です。
右の変則、左の変則、長身の本格派、剛腕と、見事にタイプが分かれています。原因3で挙げた「タイプの幅」に、はっきり応える指名だと私は感じました。
ドラフトは「誰を獲ったか」より「なぜその選手なのか」を見ると、球団の本気が見えてきます。
なお、高校生を支配下で指名しなかった点について、畑山統括スカウトは、2軍には高卒で入団した若手がまだいるため、1軍に近い選手同士を競わせることを優先したと説明しています。高校生を軽視したのではなく、育成中の若手がいるからこそ、今回は即戦力に振り切ったということです。
今日からできる、ファンとしての具体アクション
最後に、私たちファンが今日からできることを提案します。CSの悔しさを、来季の楽しみに変えていきましょう。
アクション1:指名選手9人の「名前と武器」をメモする
まずは、今回の指名選手の名前と、それぞれの武器を一言でメモしてみてください。たとえば「榊原=足と肩」「馬場=変則フォーム」「越川=二塁送球1.8秒台」といった具合です。春季キャンプやオープン戦のニュースを読むとき、この一言メモがあるだけで記事の面白さがまったく違ってきます。
私自身も、毎年ドラフト翌日に手帳へ新人の名前を書き出すのが恒例です。数年後に見返すと、「この選手がここまで来たか」と感慨深くなります。
アクション2:大学・社会人時代の情報に目を通す
今回の指名は全員が大学・社会人・独立リーグ出身です。つまり、すでに多くの試合経験と実績があります。大学野球や社会人野球の記事、選手名鑑などで、どんな成績を残してきたのかを調べてみてください。プロ入り前を知っていると、1年目の活躍を見守る楽しみがぐっと増えます。
アクション3:「控え」と「2軍」に目を向けて見る
来季の試合を見るときは、スタメンだけでなく、ベンチにいる選手や2軍で結果を出している選手にもぜひ注目してください。CSで見えた課題は「層の厚さ」でした。だからこそ、来季は控え選手の成長こそが、日本一へのカギを握ります。新人と既存の若手がどう競い合うのかを見守ることが、今いちばん面白い楽しみ方だと私は思います。
アクション4:1年目は長い目で応援する
即戦力とはいえ、プロの壁は高いものです。1年目にすぐ結果が出なくても、すぐに「ハズレ」と決めつけないでください。応援を続ける中で私が学んだのは、選手を育てるのは球団だけでなく、ファンの温かい声援でもあるということです。
応援とは、結果が出る前から信じて待つことです。
CSの4連敗は悔しい結果でした。けれども、その悔しさが今回の指名につながり、来季のチームを強くしていきます。藤川監督が言う「常にタイガースは切磋琢磨」という言葉どおり、新しい力が加わったチームの競争を、一緒に楽しみに待ちましょう。



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